人権DD(デュー・ディリジェンス)取組のすすめ(中小企業者向け)

人権DD(デュー・ディリジェンス)
取組のすすめ(中小企業者向け)

企業と人権の関わり

企業の活動には、その影響を受ける人々(ステークホルダー)が多く存在します。
具体的には、従業員のみなさまや取引先との関係、地域社会や消費者のみなさま等、活動を行う過程や結果で影響を与えています。

「SDGs」と「人権DD」
2015年に採択された「SDGs」は、国際社会が持続可能でよりよい世界を目指すために17のゴールが設定され、「地球上の誰一人取り残さない」ことを誓っています。「SDGs」は行政機関はもとより「企業」においても掲げられ、取組が行われるようになってきました。
日本政府は、「ビジネスと人権」に関する行動計画(2022〜2025)をさだめ、「SDGsの実現と人権の保護・促進は相互に補強し合う関係にあると」考え方が示されています。
このことは、「人権DD」の取り組みは「SDGs」の実現につながっていることを示しています。


ステークホルダーから選ばれる企業へ(人権DDの実践)

人権DDの実践は、ステークホルダーからの信頼を得ることで、「企業価値の向上」、「経営基盤の強化」、「従業員の離職率の低下」、「生産性の向上」が期待されます。

① 取引先から選ばれる企業に
 令和3年に経済産業省が東証一部・二部上場企業等を対象に実施した「日本企業のサプライチェーンにおける人権に関する取組状況のアンケート調査」によると、回答した企業760社のうち約7割が人権方針を策定し、5割強が人権DDを実施しているとの結果が出ています。
サプライチェーン全体で企業の人権責任が求められており、社会的責任を果たそうとする企業は、人権を尊重する企業との取引を求めています。
人権DDを実践し、取引先から選ばれる企業の地位を確立することで、企業価値の向上や経営基盤の強化につながります。

② 離職率の低下や生産性の向上
 従業員のみなさまの働く権利を尊重し、働きやすい労働環境を整備することで、一人ひとりが能力を発揮でき、離職率の低下や生産性の向上が期待できます。

③  優秀な人材の獲得
 若い世代は、企業の社会的責任に敏感であるとされ、就職先を選ぶ基準として人権尊重の取組が注目されています。そのため人権DDを実践することで優秀な人材確保にもつながります。また、国際的に認知されてきている「人権DD」を実施する企業は、外国人の人材確保においても「安心できる」企業として認識され、求職先として有利にはたらくと考えられます。

④  地域社会との良好な関係
企業の成長や中長期的な発展には地域社会と良好な関係を築くことが不可欠です。人権DDの取組は地域住民の権利を尊重する企業としてのイメージアップにつながります。

⑤ 消費者から選ばれる企業に
人権DDの実施は、自社の製品やサービスのブランドイメージの向上につながり、消費者から選ばれる企業となることで、中長期的、持続的な成長が期待できます。

参考・引用 「中小企業のための人権デュー・ディリジェンス・ガイドライン
一般財団法人国際経済連携推進センター ビジネスと人権問題を考える研究会編


*人権DDの取組等について、当事務所では情報提供等を行っております。お気軽にお問合せください。

人権DD(デューディリジェンス)

企業が自社及びサプライヤー等における人権への負の影響を特定して、防止・軽減し、その実効性の評価を行って説明・情報開示していくために実施する一連の行為のこと。

人権DDで行うこと
まず最初に企業の「人権方針」を策定します。
これは「人権を尊重したビジネスを行っていくこと」を社内外に宣言するものです。トップが自らの言葉で伝えるのが重要で、人権に関する自社の考え方を従業員や取引先等に浸透させていきます。
策定の手続き
①トップが承認していること
②一般公開され、周知されること
配慮事項
①社の内外から専門的な助言を受けていること
②従業員や取引先等の関係者に対して人権配慮への期待を明記
③企業全体の事業方針や手続に反映させること


関連リンク
「日本企業のサプライチェーンにおける人権に関する取組状況のアンケート調査」
国連「ビジネスと人権に関する指導原則」
OECD「責任ある企業行動のためのデュー・ディリジェンス・ガイダンス」(日本語版)
● 日本政府『「ビジネスと人権」に関する行動計画』